
FitEar 334を聴いたら世界が変わった話
経緯
僕はいわゆるオーディオオタクなのだがそこまでの経緯はまた別の記事で書くとして、
2017年にヘッドフォン祭りで買って作ったFitEarのMH334を聴いて衝撃を受けた時の話です。
当時のDAP(音楽プレイヤー)はSONYのZX300だったと思います。
FitEarとは
FitEar(フィットイヤー)は、日本を代表するカスタムIEMブランド です。私の場合はeイヤホンを通して購入をしました。
元々は補聴器の製作を手がける「須山補聴器」が母体で、医療分野で培われた高い技術をそのままイヤホン作りに活かしています。
国内のアーティストや声優、スタジオエンジニアの愛用者も多く、まさに「プロの現場で選ばれるイヤホン」として有名。
その中でも FitEar 334シリーズ は、ボーカル表現のリアリティと音楽的な楽しさを両立させたモデルとして長年人気を集めています。
外観・装着感

最初に作ったカスタムIEMはUERM。
当時は「これで完成形でしょ。もうゴールでしょ。」って本気で思ってたんですよ。
……でもね、FitEar 334を耳に入れた瞬間、そんな自信は粉々に砕け散りました。
声がヤバい。尊い。沼すぎる。
一言で言うならこれ。
ボーカルが耳元で囁いてるのに、同時に会場の空気ごと押し寄せてくる。
鳥肌なんて生易しいもんじゃなくて、「あ、僕もうこの世界から帰れないな」って即理解しました。
今回の記事では、その沼落ちの原因になった3曲を中心に語ります。
• マクロスF「ライオン」
• 嵐「A・RA・SHI」
• 葉加瀬太郎「情熱大陸」
※試聴環境はM21メイン
まず言わせてほしい。
シェルが透明すぎて尊い。
光が当たるたびに中のドライバーがキラッと見えるんだけど、下品さゼロでただただ美しい。
海外IEMのUERMも大好きなんだけど、FitEarは“匠の技”って単語をそのまま体現してる感じ。
これ、イヤホンじゃなくて工芸品。飾っても成立するやつ。
そして装着感。これがまた沼ポイント。
耳にニュルっと吸い込まれるのに、全然痛くない。
むしろ「ここ、僕の耳のために生まれた場所?」って錯覚するレベル。
遮音性もやばくて、差し込んだ瞬間に外界がスッ…と消える。
まさに “自分専用の音楽結界” が張られる感じ。
気づいたら、もうそこから出られない。
楽曲レビュー
マクロスF「ライオン」
試聴曲といえばコレ、っていうくらい僕の定番。
イントロからして凶悪なんですよ。高音のシンセと低音のリズムが一気に押し寄せてきて、レンジの広さを一瞬で測れる。
で、FitEar 334で聴いた「ライオン」は、もうね……沼直行でした。
まずボーカル。
中島愛さんの可愛らしく透き通った声と、May’nさんのドライで力強い声。
この対比がハッキリと浮かび上がるんです。
普通のイヤホンだと片方が埋もれたりすることもあるんだけど、334は「二人がちゃんとそこに並んでる」感じで、それぞれのキャラ性が尊いレベルで際立つ。
しかも、声が消えていく瞬間の残響や、息を吸う時のほんの小さな気配まで聴こえる。
**「あ、これ生身の人間が歌ってるんだ」**って錯覚するくらいリアル。
声優好きとしては、こういうニュアンスを拾えるだけで心臓撃ち抜かれるんですよ。
嵐「A・RA・SHI」
実は嵐が大好きです。僕は男性ですがやはり結構驚かれます。でも好きだからいいんです。

さてFitEar 334を聴くと、嵐のデビュー曲「A・RA・SHI」が別物に聴こえます。
正直、この曲は何百回と聴いてきたはずなのに、334で聴いた瞬間「え、まだこんな表情隠してたの?」って衝撃。
まずラップパート。
櫻井くんの声がめちゃくちゃクッキリ前に出てくるんですよ。
他のメンバーのコーラスに埋もれず、言葉のリズムがひとつひとつ鮮明。
もう「嵐=5人の声の集合体」じゃなくて、「5人がちゃんとステージ上に並んでる」っていう臨場感。
そしてサビ。
全員の声が重なるところで、本来なら混ざり合って“モワッ”としがちな部分が、334だと各メンバーの声の質感が残ったまま広がる。
大野くんの包み込むような声、相葉くんの伸びやかさ、ニノの軽やかさ、松潤の艶っぽさ——全部がわかる。
聴きながら「やっぱ嵐って“声”のグループなんだよなぁ」って再認識して、気付いたら泣きそうになってました。
葉加瀬太郎「情熱大陸」
この曲を334で聴いたとき、最初のバイオリンの一音で完全に心持っていかれました。
艶、粘り、そして“人間の息遣い”みたいな生々しさ。
ただの旋律じゃなくて、「弓が弦を擦って音を生む瞬間」まで全部見える。音じゃなくて“動作”を聴いてる感覚。
バイオリンの高音は透明感がありつつ、キンッと刺さらない。
むしろ「光沢のあるシルク」が耳元で揺れてるような、柔らかさと力強さの共存。
そして低弦に移ったときの振動がまた凄い。ボディが空気を震わせてる感じまで伝わって、「これCD音源だよな?」って一瞬疑うくらいリアル。
バックに入るパーカッションも楽しい。
カホンのドスっとした響きや、コンガの皮が震えるニュアンスが、バイオリンの隙間を縫うように存在感を示す。
ここで334の“定位の正確さ”が炸裂して、前=バイオリン、左右=パーカッション、奥=ベースって立体的な空間がスッと見える。
目を閉じたら即ライブ会場。目を開けても脳内はステージ。
M21で聴くと音全体に暖かみが乗って、バイオリンが「泣いてる」ように聴こえる。
FitEar 334は“声”だけじゃなく“楽器も歌わせるIEM”だってこと。
ボーカル特化ってよく言われるけど、楽器の生命感もここまで描けるなら、もう“音楽全体を愛するための道具”って呼んでいいと思う。
総評
FitEar 334を改めてじっくり聴いて思ったのは、やっぱり中音域の表現力は圧倒的ということ。
特にボーカル。息遣い、声の厚み、ハーモニーの分離感、そのすべてが「人が歌ってる」という実在感を伴って迫ってくる。
アニソンもJ-POPもクラシックも、“声”も“楽器”も同じ熱量で鳴らせるIEMって本当に稀有だと思う。
一方で、最新機種と比べると超高解像・超低域ドーン!みたいな派手さは控えめ。
その意味では「モニター的なフラットさ」や「低音ブースト系」のイヤホンを好む人には、少し物足りなく感じるかもしれない。
でもそれこそが334の個性。無理に盛らず、音楽の“生身感”をそのまま差し出してくれる潔さがある。
メリット
• 中音域(特にボーカル)のリアルさと艶
• 分離感の高さによるハーモニーの聴きやすさ
• アコースティック楽器の質感表現も得意
• 国産ならではの造りの美しさ、装着感の良さ
デメリット
• 最新フラッグシップに比べると解像度やレンジの派手さは控えめ
• 価格は高め
• フラット志向の人には“色気が強すぎる”と感じる可能性あり
こんな人におすすめ
• ボーカル沼にハマりたい人
• アニソンやJ-POPで“声の個性”を楽しみたい人
• 音楽を楽曲単位でじっくり味わいたい人
逆に合わないかも
• フラットで硬派なモニターサウンドを求める人
• 低音ドーン!高音キラッキラ!みたいな刺激を最優先する人
ちなみに今回使っているケーブルはFitEar cable 013という純正のものですが普段は別のFitEar機種で使用しているのでonsoというメーカーのケーブルも使用しています。

FitEar 334は決して最新のスペックを誇るIEMではありません。
ですが、ボーカルを中心に据えた音楽体験をここまで豊かに描けるイヤホンは、今でもそう多くはありません。
“声を大切に聴きたい人にこそ、今でも選ぶ価値があるIEM” ——それが、僕の出した結論です。